組織とそれをとりまく社会の関係は、ますます複雑性を増している。いま求められるリーダーシップとは。そしてManaging Complexity(以下MC)によって実装可能なスキルとは。いち早くMCを導入し、現在もリピートでの受講を続けているLINE社とNEC社。それぞれのキーパーソンに、プログラムの効果と次世代のリーダー像について語ってもらった。
LINE株式会社
Talent Successチーム マネージャー
新卒採用チームマネージャー
寺田 貴哉氏
株式会社リクルートへ入社。営業・経営企画などを経て人事へ。新人事制度の設計・導入、全社横断プロジェクトをリード。2019年にLINE株式会社にJoin。人事にてマネジメント研修・役員研修の導入を率い、社内のキータレントに対する成長支援や機会提供を行うTalent Success Teamの立ち上げを行う傍ら、Zホールディングスにてグループ各社の役員を対象としたエグゼクティブコーチングを担当。
日本電気株式会社
NEC DGDFビジネスユニット 主席ビジネスプロデューサー
岩田 太地氏
NECに入社後、金融業向けソリューション事業に携わりつつ、社内起業家としての新規ビジネス創出に挑戦。インドでの新規事業立ち上げや三井住友銀行とのジョイントベンチャーを設立。NECにて、金融とICTの融合を図る「FinTech」関連事業を推進するFinTech事業開発室長、デジタルインテグレーション本部長などを経て23年4月より現職。
「意図」を持って世界を見る力を養える
寺田 「LINE社は2021年から30名の執行役員や事業責任者など、リーダーシップをとる立場にいる社員にMCをインストールしています。その中で感じているMCの魅力は、Learning Outcome(※)という共通言語を習得できること。ある事象について理解を深めるには『意図』を持って見ることが必要で、その『意図』の部分を網羅的な共通言語で身につけることができる。例えば、イーロン・マスク氏のツイッター買収について、Learning Outcomeを用いて語ってみようという会話が社内であったりしました。受講したメンバーは他人の経験をも自分の経験に置き換えながら思考を深めていけるようになっています。」
※Learning Outcome(通称LO)とはこのプログラムで習得するリーダーシップに関する18のコンピテンシー。それぞれに明確な定義があり、意識して実践しやすい点が特徴。
岩田 「LOが素晴らしいという点に同感です。私の関係するチームでは、人のパフォーマンスに対する評価の言葉が圧倒的に足りていなかった。『なんかいいよね。頑張ってるよね』というニュアンス評価だったのが、どこがいいのか、改善すべき点は何なのか、語れる言葉が手に入ったと実感しています。
網羅的な概念がない組織では『見て倣え』になり、強みに偏りのあるチームになってしまう。そういった意味で、LOは我々にとっては多様性を認め合えるツールにもなりました。逆にLINEさんは個の力の活かし方がうまいイメージですが、その点はいかがでしょう。」
寺田 「色々な『個』があるという考えは浸透していますが、ともするとそれ自体がバイアスになる場合もあります。大事なのは色んな視点があると知り、それを自分の引き出しに持つこと、例えば『個』だと思っていたものを共通化できることに気づけると、物事を客観的に整理して動かせる。そういう側面でもLOを活用できていると感じています。」
「問う力」を徹底的に装着するための「学習の科学」
寺田「問いの網羅性や深さが変わる点がMCで得られる最大のポイント。気づきの数があるほど、起きている事象へのHOWや考え方が広がる。プログラムの中で参加者同士がディスカッションしながら理解と実践力を高めるという仕立ても、自社のニーズにフィットしました。僕は別の役割としてコーチングも行っているのですが、良質な問いをなげかけて、頭の中を動かすという点ではMCの各セッションとコーチングに共通点があると感じています。」
岩田「問う力を磨くという点はコーチングの思考と似ていますね。このプログラムは知識の習得そのものには重きを置いていなくて、バイアスを持たずに知識を吸収し、いかに使いこなすかにフォーカスしている点が新しい。知識を思い出すのと、思い出して使いこなすのは別レイヤーだというメッセージを、プログラムの根底に流れているサイエンスオブラーニングから受け取れます。そういった意味では、10週間終了後も学びの場が継続し続ける仕組みが重要だと感じます。受けて終わりではあまりにもったいない。」
継続的な学び合いの場づくり ~LINE社の先行事例~
寺田「LINE社では週に1度、30分くらい現役の参加者同士で事前課題についてなど会話しています。時々そこに卒業生が参加したり。卒業生アルムナイもあって、そちらでは毎月その月に発揮したLOを互いに発表し合うようにしています。使いこなせなかったLOは?と問うことでそこから改めて意識することができるようにするなど、学び合いの場での言語化と認知の仕掛けを大事にしています。プログラムを卒業しても自発的な学びを継続してもらうために、実はMCへのアサイン時から内発的動機を高めるようなコミュニケーションを心がけています。」
岩田「我々にとっては社内でのアルムナイ活性化にはまだ工夫の余地があるので、アサイン時の工夫という話はとても参考になります。」
次代のリーダー像に求められる姿勢
寺田「組織にMCを入れる際にもう一つ意識した点としては、あえて高いレイヤーの役員から導入すること。組織に流れる問いや文化に影響を及ぼしているのはリーダー層なので、彼らが変われば大きなうねりが期待できます。」
岩田「組織に影響力のあるリーダーから順に理解した方がいいというのは同じ感覚です。経験豊富なリーダーがその経験を普遍的な言葉にできることで再現性を高められるし、実行力やアドバイスのレベルも上がる。MCは感情も含めたその人の経験値を自分で整理するパーソナルナレッジツールになりうる。」
寺田「型をインストールするだけ、与えられたものを吸収するだけになってしまうと、このプログラムの良さを生かしきれない。それだともったいないですね。」
岩田「教える、教わるという構図に慣れている人はモードシフトする必要があると思います。これからのリーダーは、自ら学ぶべきであり、チームとしての学び合いの場をファシリテートできるのがいいリーダーだと思います。
『知っている=偉い』という時代はもう終わった。問いを立てることができ、やり方のオプションや選択肢を増やせる仕組みがあって、皆の意見をまとめた解に向けてエモーションも含めて引っ張れるリーダーが求められてくると思います。」
導入によって期待できるシナジーの最大化
寺田「MCの卒業生が口を揃えて言うのは共通言語を持ててよかったということ。そういった意味ではグループ間やグローバルでシナジーを追求するときに、互いを理解するための共通言語構築に向けて導入すると親和性が高い。言葉の意味が文化によって微妙に違うと認識の齟齬につながるリスクがあり、LOで明確な定義を深く学ぶことで会話のグリップ力が高まると思います。」
岩田「違うカルチャーの人に共通言語をもたらすという点では、すごく意味がありますね。それと、同じカルチャーにいると恐ろしいことに似たような視点になっていく。組織が変化と複雑性に対応するために不可欠な『これまでと違う視点』を、外の人に聞きにいかずともMCを受講することにより自分たちで持ち込めるというのは、なかなか他にはない価値だと考えています。」
寺田「このプログラムがもっと広がっていくことが大事だと思います。一度この学びを通過するというのは、複雑性に対峙しているどの組織においても必要だと感じています。」
Case 02
LINE株式会社 寺田様 × 日本電気株式会社(NEC)岩田様
HRのキーパーソンが語るManaging Complexityの魅力とは。
リピート受講の決め手に迫る。